Ferromagnetism and exchange bias in compressed ilmenite-hematite solid solution as a source of planetary magnetic anomalies
SATOSHI OHARA, TAKASHI NAKA AND TAKESHI HASHISHIN
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abj2487
高速遊星ボールミルによる遠心加速度(150 G)は、スチールボール間での衝突で瞬間的に生じる高温(>1250 K)高圧(>23 GPa)環境を生み出すことができることをイルメナイト(FeTiO3)を衝突に曝して得られた生成物の巨視的XRD測定(SPring-8)と微視的TEM観察によって明らかにした。<https://www.nature.com/articles/srep04700>
遠心加速度を増やすことで衝突エネルギーを増大させることができれば、高温高圧相をグラムオーダーで得られると予想された。シンキー社製のナノ粉砕機を用いてイルメナイト(FeTiO3)を420 Gの衝突に曝したところ、イルメナイト-ヘマタイト固溶体(IH固溶体:0.5FeTiO3・0.5Fe2O3)が得られ、約1.8 %のモル体積の減少を示した。FeとTiの価数はFe3+とTi3+から成り、FeTiO3のFeの87%がFe3+であることが明らかになっただけでなく、強磁性を示した。この強磁性は地磁気の歴史的変動を解釈するために使用される岩石の磁化研究において極めて重要であることを示している。420 Gの衝突エネルギーがもたらす高圧状態は遷移金属酸化物の電荷とスピンの状態を制御できることを示唆していた。<https://www.nature.com/articles/s41598-020-62171-z>
420 Gの衝突エネルギーで得られた強磁性を示すIH固溶体は鉱物系で知られている火成岩や変成岩に共通している。同固溶体は300 Kで1.5 Am2/kg の飽和磁化、990 Kのキュリー温度、100 K以下の磁気交換バイアス(60 Kで1.7 × 105 A/m)を示した。岩石の圧縮力は、マントル上部での高圧、岩石の隕石衝突などの高圧衝撃によって発生するとされている。したがって、圧縮されたIH固溶体は、月や地球を含む他の惑星の磁気異常の新たな発生源の候補であると考えられる。<https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abj2487>